自費出版-社史・記念誌、個人出版の牧歌舎

エッセイ倶楽部

牧歌舎随々録(牧歌舎主人の古い日記より)

074. 第一義的感覚

 人間は直接的な契機によって発動されたものでない、自然にもっている感覚というものがある。ふと河原を散歩したくなる。ふとコンピュータをうさんくさく思ったりする。そんな、いろいろな第一義的感覚がある。
 むろん、つきつめればそれは降って湧いたようなものでなく、原因があってそうなのであるけれども、今の時点で「自然にそれを備えている」というところが大事である。人はそこから出発する権利が誰にもあるし、そうでなければ思考も行動も地から足が離れてしまう。第一義的感覚など、未整理で未熟で気まぐれな幼稚なものであり、これを否定して知的検討の検証を経たもののみを頭から採用していくのが賢明な方法と心得るならば、それは具体的な人間よりも抽象的知識を優先するものであって、おそらく人間がおかす最大の誤りとなる。

1999.03.27