自費出版-社史・記念誌、個人出版の牧歌舎

エッセイ倶楽部

牧歌舎随々録(牧歌舎主人の古い日記より)

003.

人生には、あちこちに「詩」がある。その詩を見つけようと思えば、詩を求める目で人生を見なければならない。容易なことではない。詩に渇仰し、他のことは無責任に投げ出してしまえる精神をもつということは、現実社会に生きれば生きるほど困難になる。常識がそれを拒むからである。
 詩は観念である。観念は無責任であり、非常識なものである。また非現実である。
 人生に詩がある、というのは、だから現実そのものの側に詩があるというのでなく、こちら側にあるのである。人生には現実の人生とこちら側の人生があるのである。こちら側の人生として生きるとき、詩があちこちにあるのである。
 ただし、こちら側にいるだけで詩が見えるかというとそうではない。心はこちら側に置いて、目は現実を見る、というのがコツである。詩はその落差の中に見えるものである。
 はっきり言えば、多感な人の妄想が、現実を詩に変えるのである。