自費出版-社史・記念誌、個人出版の牧歌舎

エッセイ倶楽部

牧歌舎随々録(牧歌舎主人の古い日記より)

059.

国家主義は非情である。しかしその大きな要素である愛国心は、情意そのものである。
 共産主義もまた、非情である。しかし国家主義の非情への否定の理論である時には情意がその推進力である。
 われわれは国家主義や共産主義を合理的な正しさの故に支持するのか。それとも情意の世界を実現するために支持するのか。
 問題は合理主義か情意主義かである。国家主義か共産主義かではない。ウヨクかサヨクかではない。
 結論は合理主義も情意主義も人間が生きる上での必要な車の両輪であるということである。そして、現実社会の中では合理主義が少しだけ先行する。しかしそれはあくまで「少しだけ」である。
 国家主義と共産主義がその合理性を競うのは人間解放のための一面的な戦いにすぎない。情意と離れすぎたとき、合理性にまさっても人間の総合的指針とはなりえない。

1998.11.21