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051●常識の変化
 戦後、長い間、おそらくは昭和40年代の後半まで、一つの常識があった。金持ちよりも貧乏人がエラい、という常識である。あるいはまた、金持ちよりも貧乏人のほうがカッコイイ、という常識でもあった。貧しさの中で明るく生きる若者もカッコよければ、貧しさゆえの不条理の中で暗い人生観を抱く若者もカッコよかったのである。金持ちというものは、そうしたなかで、目立たぬように、こっそりと生きていたのであり、無一文の若者が、彼らを嘲笑し、憫笑する、そういう時代がたしかにあったことを、ある年齢以上の人は記憶している。そう、「反体制」のことばこそ、当時の若者にとって、頭上高く光り輝く太陽の如き絶対者だったのだ。
 この「常識」は、「戦後民主主義」とか、「マルクス主義」とかと無縁ではない。すなわち、それらが優勢な思想であったように、貧乏人が優勢な階級であったのだ。国民がどんどん物質的に豊かになるなかで「貧乏人の方がエラい」の感覚が優勢となり、石油危機以来の低成長のなかで、「金持ちの方がエラい」に戻ってきた、というのは、不思議というより、むしろ皮肉な感じがする。
 今や、「貧乏人」は死語であり、「庶民」もまた死語である。貧乏人も庶民も確かに存在しているのに、この二つの語は死語なのである。これはいったいどういうことか?




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